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横浜地方裁判所 平成2年(行ウ)17号 判決 1997年5月19日

神奈川県鎌倉市大船一丁目九番三号

原告

有限会社大橋屋

右代表者代表取締役

若林重利

右訴訟代理人弁護士

鈴木義仁

増本一彦

古川武志

鈴木裕文

神奈川県鎌倉市由比ケ浜四丁目六番四五号

被告

鎌倉税務署長 埋橋修

右指定代理人

齋木敏文

松原行宏

清住碩量

池上照代

中道衆矢

大野武治

古賀謙二

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対し、昭和六三年一二月二七日付けでした、

1  昭和五九年九月一日から昭和六〇年八月三一日までの事業年度以降の法人税の青色申告承認取消処分

2  昭和六〇年九月一日から昭和六一年八月三一日までの事業年度の法人税の更正及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、いずれも異議決定により取り消されたも後のもの)

3  昭和六一年九月一日から昭和六二年八月三一日までの事業年度以降の法人税の更正のうち所得金額が六万五四三二円、納付すべき税額一万九六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、いずれも異議決定により取り消されたも後のもの)

4  昭和六二年九月一日から昭和六三年八月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額二七万六〇四四円、納付すべき税額八万二八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定(ただし、いずれも異議決定により取り消されたも後のもの)

をいずれも取り消す。

第二事案の概要

本件は、被告が、中華食堂及び喫茶店を営む有限会社である原告に対し、所得税の税務調査に際し、被告係員に第三者の立会いを認めるよう要求してこれに応ぜず、正当な理由なく帳簿書類等を提示しなかったとして、原告に対し、昭和六三年一二月二七日付けで、昭和五九年九月一日から昭和六〇年八月三一日までの事業年度(以下「昭和六〇年八月期」という。)以降の法人税の青色申告承認取消処分(以下「本件青色申告承認取消処分」という。)をし、昭和六〇年九月一日から昭和六一年八月三一日までの事業年度(以下「昭和六一年八月期」という。)、昭和六一年九月一日から昭和六二年八月三一日までの事業年度(以下「昭和六二年八月期」という。)及び昭和六二年九月一日から昭和六三年八月三一日までの事業年度(以下「昭和六三年八月期」という。)の法人税につき、いずれも推計により所得金額を算出し、これに基づき確定申告の所得金額の更正と過少申告加算税の賦課決定をした(以下、合わせて「本件各更正、各賦課決定」という。)ことについて、原告が、本件青色申告承認取消処分については、法人税法の適用を誤った違法があるなどしてその取消しを求め、本件各更正、各賦課決定については、推計の必要性がないばかりか、推計の内容自体も不合理なものであり、また、原告のした実額反証による所得額が正しい所得額であり、被告のした本件各更正、各賦課決定はいずれも違法であるとして、これらの取消しを求めたものである。

一  争いのない事実

1  原告は、神奈川県鎌倉市大船一丁目九番三号に本店を置き、同所において喫茶店「シャノン」を、同書九番一二号において中華食堂「三代目大橋屋」(以下、それぞれ「シャノン」及び「大橋屋食堂」という。)を営む有限会社であり、被告から、本件青色申告承認取消処分を受けるまで、その法人税につき、青色申告の承認を受けていたものである。

2  原告は、被告に対し、原告の昭和六一年八月期、昭和六二年八月期及び昭和六三年八月期の法人税につき、法人税法一二一条所定の青色申告書により、法定期限内に確定申告した。

3  被告は、原告の本件各係争事業年度分に係る確定申告書を検討した結果、原告に対しては長期間調査を行っていなかったこと及び収入の伸びに対し申告所得が定額であることから、原告の保存する帳簿等の記入保存状況を調査し、申告の真実性、正確性を確認する必要があると判断し、質問検査権を行使することにした。

4  そして、被告は、原告が、青色申告承認の取消事由として法人税法一二七条一項一号の定める帳簿書類の備付等が大蔵省令で定めるところに従って行われていない場合に該当するとして、本件青色申告承認取消処分を行った。

5  また、被告は、原告が所得税の税務調査に応じないため、実額により原告の所得金額を算定することは不可能であると判断し、原告の取引先等に対する調査によって把握した取引金額を基礎として原告の所得金額を推計し、別表一ないし三の各「更正、賦課決定」欄記載のとおり、本件各更正、各賦課決定をした。

6  原告は、被告の右各処分を不服として、平成元年二月二三日異議申立てをしたところ、被告は、平成元年六月二九日本件青色申告承認取消処分については棄却を、本件各更正、各賦課決定については、別表一ないし三の各「異議決定」欄記載のとおり、一部取消しの決定をそれぞれした。

7  原告は、これを不服として、平成元年七月二七日国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同審判所長は、平成二年七月二日審査請求を棄却する旨の裁決をし、原告はそのころその旨の通知を受けた。

二  争点と双方の主張

本件の争点は、被告が行った本件調査は適法か、また、原告が、本件調査の際、第三者の立会いを認めなければ調査に応じないなどと対応したことが、税務調査を拒否したことになり、青色申告承認の取消事由に該当することになるか、さらには、本件において、原告の所得金額の算出に推計をする必要性があるか、被告のした推計は合理性を有するか、原告のした実額反証は信用し得るかであり、これらについての双方の主張は、以下のとおりである。

1  本件調査の適法性の有無

(一) 被告の主張

被告は、原告の本件各係争事業年度分に係る確定申告書を検討した結果、原告に対しては長期間調査を行っていなかったこと及び収入の伸びに対し申告所得が低額であることから、原告の保存する帳簿等の記入保存状況を調査し、申告の真実性、正確性を確認する必要があると判断し、質問検査権を行使することにした。なお、法人税法一五三条は、このような質問検査の範囲、程度、時期、場所等について格別の要件を定めていないから、これをどのように行使するかについては、収税官吏の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。そして、調査実施の日時、場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別性、具体的な告知などは、質問検査を行う上で、法律上一律の要件とされているものではないから、このような事前通知や調査の個別具体的な理由開示を行わずに調査を行っても、それだけで直ちに税務調査が違法となるものではないというべきである。また、第三者の立会いを認めるか否かも、同様に税務職員の裁量に委ねられているものというべきであり、本件調査において、被告係官が調査に関係のない第三者の立会いを認めなかったのは、税務調査がその性質上調査対象者の取引先等の秘密に属する事項にも質問検査が及ぶことがあり、一般私人には税務職員のように職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという義務が課されていないことから、これらの者を調査に立ち会わせると、法が守秘義務を定めた趣旨に実質的に反する事態が現出するおそれがあると判断されたことによるものであって、被告係官に与えられた裁量の範囲内にある行為である。

(二) 原告の主張

本件調査は、客観的必要性がないにもかかわらず行われたものであって、そのこと自体からして違法である。すなわち、税務調査としての質問検査は任意調査であり、調査に応ずるかどうかは納税者の自由な選択に委ねられている。しかし、税務調査は、多かれ少なかれ、納税者の営業や生活に支障を及ぼすものであるから、税務職員が税務調査において質問検査を行うに際しては、客観的必要性が存在することが必要というべきである。被告は、本件における調査の必要性について、長年調査をしていなかったこと及び収入の伸びに対し申告所得が低額であったことを掲げるが、長年調査を行っていないというだけでは調査の客観的必要性があるとはいえないし、収入の伸びに対し申告所得が低額であったといっても、取締役報酬や従業員給与を増額したことによるものであり、それ自体は決算書等を見れば容易に判明し得たはずであるから、これも調査の客観的必要性を理由付けるものとはならない。

また、税務調査の手段は、社会的に相当な限度にとどまらなければならないのであって、税務職員には、納税者の私的利益との比較衡量のうえ、手段、限度が社会通念上相当である範囲内での合理的な裁量が認められるにすぎない。しかも、申告納税制度の下では、申告によって自己の納税義務は既に確定しているのであるから、公権力による措置がとられる過程で適正手続が保障される必要がある。したがって、税務職員は、原則として、納税者に、いつ調査を行うか、いかなる理由で調査するのか、調査の対象とする年度はいつなのかを告知する必要があるというべきである。本件調査の場合、被告係官は、原告代表者らに、調査の理由、必要性について告知していないうえ、調査対象年度についても、三年分と言ってみたり、一年分と言ってみたり、四年分と言ってみたり、調査の過程で恣意的に説明を変遷させていたものであって、そのことだけでも、被告係官の質問検査は適正なものと評価することができない。

さらに、税務調査を受ける者は、税法や税務には精通していないのが通常であり、近時強権的な税務調査が横行している中で、税務職員の質問検査に的確に対応し自己の立場や利益を守る手だてを持っていない。このため、納税者が任意調査に応ずるに当たり、信頼する者に立会いを求めるのは当然のことであり、これを排斥する理由はない。現に、被告管内において、従前、立会人のいる中で税務調査が行われたことがあるし、他の団体については、立会いを認めている。しかるに、本件調査の場合、被告係官は、第三者の立会いを求める原告の具体的事情、状況を考慮せず、また、原告が依頼した第三者が何ら調査を妨害するような状況でもなかったのに、この要求を容れずに、第三者の立会いの排除に固執したものである。当時、原告の従業員の若林重利(当時の代表者若林シヅの長男、現在の代表者。以下「重利」という。)は、鎌倉民主商工会の副会長をしていたが、本件の税務調査は、立会人の存在にかこつけ、更正処分を強行し、消費税導入等に反対する民主商工会(以下「民商」という。)の幹部を狙い打ちにし、その弱体化をもくろんで行われたものといわざるを得ず、このような被告係官の態度は、質問検査権の行使として許された合理的な裁量の枠を超え、違法である。

2  本件青色申告承認取消処分の適法性の有無

(一) 被告の主張

法人税法一二七条一項一号は、帳簿書類の備付け、記録又は保存が同法一二六条一項に規定する大蔵省令で定めるところに従って行われていないことを青色申告承認の取消事由としているが、これは、青色申告の承認を受けた内国法人の帳簿書類について、税務署長が同法一五三条に基づく質問検査を行うことができることを前提として、その調査により、帳簿書類の備付け、記録又は保存が正しく行われていることを確認することができる場合にのみ、右承認による特典を付与するという趣旨であり、青色申告法人が右帳簿書類の調査に正当な理由なく応じないため、その備付け、記録又は保存を税務署長において確認することができないときは、同法一二七条一項一号に定める青色申告承認の取消事由に該当するものというべきである。なぜならば、青色申告制度は、申告の基礎となる法人の帳簿書類の正確さに対する信頼を前提として成り立つものであり、当該法人の調査拒否により帳簿書類の提示が受けられず、その正確性の確認ができないような場合にまで、青色申告承認による特典の享受を認めなければならないとすることは、右制度の趣旨に反することになるからである。その意味で、同法一二六条所定の帳簿書類の備付け及び保存は、青色申告法人の帳簿書類が客観的に存在し、当該法人が現にこれを保存していることのみをいうのではなく、税務職員が必要に応じて、いつでも閲覧し得る状態に置くことをも含むものと解すべきである。

ところで、原告会社の重利らは、鎌倉税務署の大野係官ら及び三浦係官らが、昭和六二年一二月四日の臨時調査以後、調査に関係のない第三者である立会人を退席させた上で、原告の昭和六〇年八月期ないし昭和六三年八月期の帳簿書類を提示し、調査に協力してほしい旨、再三再四説得を試みたにもかかわらず、立会人を退席させるどころか、「私が呼んだのだから文句はないだろう」とか、「立会いを認めてはいけないということが法律に書いてかるのか」などと発言し、さらには、「今回の税務調査は、是認を勝ち取るまで戦う」とか、「更正をするならば、裁判まで争う」などと宣言し、多数の立会人とともに、終始非協力的かつ威圧的な態度をとり続け、被告係官らの右調査の協力要請に全く応じようとせず、帳簿書類等も全く提示しなかったものである。このように、原告は、被告係官の再三再四の調査協力要請にもかかわらず、多数の立会人の立会いを要求し、正当な理由なく帳簿書類等を提示しなかったものであるから、被告は、原告に、法人税法一二七条一項一号所定の青色申告承認の取消事由が存在すると判断して、本件青色申告承認取消処分を行ったものであり、右処分は適法である。

なお、原告は、本件青色申告承認取消処分には理由を付記していない違法があると主張するが、法人税法一二七条二項は、青色申告承認の取消しの基因となった事実が同条一項各号のいずれに該当するかを記載すべき旨を規定するにとどまり、一号の場合、備付け、記録又は保存のいずれの義務違反があるかまで記載すべきものとはしていない。

(二) 原告の主張

原告の行為は、青色申告承認の取消事由に該当しない。すなわち、原告は、昭和六二年一二月四日午後三時の調査においても、帳簿書類をすべて準備し、大野係官らの目の前の机の上に帳簿書類等を置くとともに、すぐ脇の段ボール箱の中には原始資料等も用意したうえで、大野係官らに対し、帳簿を見てほしい、調査をしてほしいということを再三要請している。また、昭和六三年八月一〇日午後三時の調査においても、帳簿書類等を三浦係官の目の前の机の上に置き、領収書等の原始記録については、すぐ側の段ボール箱に入れていつでも取り出せる状態にして用意し、いつでも確認できる状態にしたうえで、調査をしてほしい旨、また、帳簿を見てほしい旨を要請している。したがって、仮に、法人税法一二七条一項に関する被告の解釈論を前提としても、青色申告承認取消しを正当化する被告の主張は全く成り立たない。被告係官は、原告に対し、青色申告承認取消処分をすることを予め意図して、敢えて帳簿書類を見ようとしなかったものである。

また、本件青色申告承認取消処分には、理由付記がされていない違法がある。すなわち、法人税法一二七条一項一号は、青色申告承認の取消し事由として、備付け、記録又は保存という三つの異なった態様について義務違反を掲げているが、備付け、記録、保存のそれぞれの義務は性質が異なることはもとより、根拠も法令も別個のそれぞれの義務は性質が異なることはもとより、根拠も法令も別個の条文に基づく別個の義務であるし、また、処分を受ける者の争訴による救済という観点からも、備付け、記録、保存のいずれの態様の義務違反が問われたのかを具体的な事実によって特定する必要があるものというべきである。しかるに、本件青色申告承認取消処分の通知書は、単に法人税法一二七条一項一号に該当すると記載しているだけで、備付け、記録、保存のいずれの事実が欠けていたかを具体的に明記していないから、理由を付記していない違法があるものといわなければならない。

3  推計の必要性の有無

(一) 被告の主張

申告納税制度の下における納税者は、税法に従い正しい申告をする義務を負うとともに、その申告を確認するための税務調査に対しては、所得金額の計算の基となる経済取引の実態を最もよく知っている者として、その所得金額を算定するに足りる直接資料を提示し、その申告が正しいことを税務職員に説明する義務を負うものといわなければならない。しかるに、重利らは、本件調査に際し、再三再四にわたる大野係官ら又は三浦係官らによる、立会人を退席させ、帳簿等の原始資料を提示し、調査に協力するようにとの要請を受けたにもかかわらず、前述のように、立会人とともに、終始非協力的かつ威圧的な態度をとり続け、立会人を退席させず、帳簿書類も提示しなかった。そのため、被告は、原告の本件各係争事業年度分の所得金額を実額で計算することは不可能と判断し、やむを得ず、推計の方法により、右金額を算定せざるを得なかったものである。

(二) 原告の主張

前述のように、本件調査に当たり、重利らは、帳簿書類を提示してこれに協力していたのであるから、被告は、実額によって原告の所得金額を算定することが容易にできたのであり、推計課税の必要性は全く存しなかった。

4  推計の合理性の有無

(一) 被告の主張

推計方法はもとより合理的でなくてはならず、これが合理的であるというためには、採用した推計方法に合理性がなければならないが、被告は、原告が中華食堂及び喫茶店を別個の事業所において営むことから、大橋屋食堂においては米及び中華用そば玉の仕入金額の合計額を、シャノンにおいてはコーヒー豆の仕入金額をそれぞれ基礎として、大橋屋食堂及びシャノンの比準同業者における売上原価に占める右各仕入金額の割合を乗じて原告の売上原価を算出し、さらに、右売上原価の金額を基礎として、比準同業者の平均売上原価率及び平均一般経費率により売上金額及び一般経費の額を算出し、右売上金額から売上原価、一般経費、特別経費(役員報酬、建物及び建物附属設備に係る減価償却費、支払利息割引料並びに家賃地代)をそれぞれ差し引いた金額に営業外収益(受取利息、公衆電話手数料、新装祝金収入及び不動産管理収入)を加えて所得金額を推計するという方法を採った。

被告は、右比準同業者を抽出するに当たり、原告が中華食堂及び喫茶店を別個の事業者において営むことから、原告の納税地を所轄する鎌倉税務署の管内に事業所を有する中華食堂を営む個人又は法人の事業者並びに喫茶店を営む個人又は法人の事業者のうち、次のとおり抽出基準を設け、本件係争事業年度ごとにその基準のすべてに該当する者を、中華食堂を営む事業者については別紙三のとおり、喫茶店を営む事業者については別紙四のとおり、それぞれ抽出した(なお、抽出すべき事業者が法人である場合は、原告と事業年度を六か月以上同じくする者をそれぞれの事業年度の比準同業者とした。)すなわち、(1) 青色申告の承認を受けている者、(2) 売上金額が、中華食堂を営む個人又は法人の事業者の場合本件各係争年分ないし各事業年度の米と中華用そば玉の仕入金額が原告のそれの半分以上二倍以下の範囲内である者、ないしは、喫茶店を営む個人又は法人の事業者の場合本件各係争年分ないし各事業年度のコーヒー豆の仕入金額が原告のそれの半分以上二倍以下の範囲内である者、(3) 年を通じて中華食堂又は喫茶店を営む個人又は法人のうち、使用人に対する給与等の支払のある者、(4) 災害等により経営状態が異常であると認められる者及び更正又は決定処分がされている者のうち、当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間の経過していない者又は当該処分に対して不服申立てがされ、又は訴えが提起されて、現在審理中である者のいずれにも該当しない者、という抽出基準を設け、比準同業者の抽出に当たった。

そして、被告は、本件各係争年度の所得金額を推計するに当たり、比準同業者として前記の条件を満たす者を漏れなく抽出したので、そこに恣意が介入する余地は全くなく、かつ、原告と同じ中華食堂又は喫茶店を営む事業者で、青色申告の承認を受けている個人又は法人の、売上原価に占める中華用そば玉及び米並びにコーヒー豆の割合の平均値、平均売上原価率及び平均一般経費率を用いて本件各係争年度の所得金額を推計したものであり、右推計方法により算出された所得は、原告の実際の所得に近似した正確な数値が得られているのであるから、この推計方法には合理性がある。

(二) 原告の主張

被告は、更正から始まり、異議決定、本件訴訟においてと、推計課税の数値(売上原価率、一般経費率、比準同業者数)を三回も変遷させている。これは、被告の推計が恣意的に行われていることの現れである。また、被告は、訴訟の過程において、比準同業者の選定数を減らしたり、新たな比準同業者を採用したりしているのであり、恣意的な推計課税を行っていることが明らかである。

被告は、通達による抽出基準に基づき、比準同業者を抽出したというが、中華食堂、喫茶店といっても、それぞれ業態が異なるから、被告のした推計方法には合理性がない。大橋屋食堂は、料理に使う素材等も値段に比べてよい材料を使っており、一人前の盛りつけ量も多く、他店の比べて売上原価率が高かった。シャノンは、その場所が木造建物の二階ということもあり、ほとんどが固定客で、また、ランチタイムには、定食メニューを出し、コーヒーの入れ方はドリップ式であるなどのことから、それだけ余分に人手がかかっていた。また、被告は中華食堂ないし喫茶店を営む業者のうち、一年を通じて使用人に対する給与の支払があるものを抽出基準の一つとして掲げているのであって、この基準からすると、中華食堂及び喫茶店の比準同業者として抽出されたそれぞりの事業者が、それぞれ取締役報酬や事業専従者給与を支給したうえで、従業員に給与を支給していることになる。しかし、原告は、一つの会社であり、食堂部門(大橋屋食堂)及び喫茶部門(シャノン)に分かれ、独立採算制をとってはいるが、それぞれで取締役報酬や事業専従者給与を支給することはしてはいない。また、被告の抽出した比準同業者の場合、すべて取締役報酬と事業専従者給与を取ったうえで、従業員の給与が一般経費となっている。しかし、原告の場合には、重利や代表者の娘夫婦らが営業に従事していたが、役員は二人だけで、食堂部門では取締役報酬を取っている者はおらず、すべて従業員ということになるため、他の取締役報酬や事業専従者給与を取っている比準同業者に比べると、人件費の分だけ一般経費率が高くなってしまう結果になる。さらに、比準同業者においては、それぞれ役員報酬なり、事業専従者給与として差し引かれているが、原告の場合差し引かれず、一般経費の中に解消されてしまう結果、比準同業者に比べ過大な所得が認定されることになる。比準同業者における一般経費は、右のように、役員報酬なり事業専従者控除が差し引かれた後の一般経費であるから、これを原告に適用する場合にも、大橋屋食堂及びシャノンそれぞれにおいて、比準同業者の役員報酬ないし事業専従者控除に相当する金額を差し引いて適用しなければ、人件費を含めた原告の一般経費を過少に算定することになる。このように、被告の推計方法は、原告の実態とかけ離れており、合理性を欠く。

被告は、「米及び中華用そば玉」ないし「コーヒー豆」の仕入金額が原告のそれの半分以上二倍以内という基準で、比準同業者を選定したというが、このような基準で比準同業者を抽出すると、仕入金額の一五〇パーセント以上二〇〇パーセントまでの比準同業者の売上金額は必然的に高くなってしまい、全体の平均値を求めるに際して、五〇パーセントないし一〇〇パーセントまでの比準同業者の売上金額によっては、相殺されず、右仕入金額の一五〇パーセント以上二〇〇パーセントまでの比準同業者の売上金額に引きずられて高くなり、およそ公正な平均値を求めることはできない。このような推計方法は、納税者に過大な所得を認定するものであり、不合理である。

乙第一号証の東京国税局長の通達は、「店舗を構えて、主として中華そば及びその他の中華風のめん類並びに簡単な中華料理を調理し、飲食させる個人又は法人」として、被告に対し、大橋屋食堂の比準同業者の選定を指示している。これは、中華そばという業種別分類以上に細かい要件を加えて、比準同業者を抽出させようとしたものと考えられるが、基準自体あいまいで、合理性を有しない。また、鎌倉税務署の吉金統括官及び山本係官は、個人については、これによる比準同業者を業種別名簿の「中華そば」という分類により抽出したとしているが、何ゆえ、それが右の通達にいう「主として中華そば及びその他の中華風のめん類並びに簡単な中華料理を調理し、飲食させる個人」と同一といえるのか、明らかではなく、通達にいう業種を中華そばを営む業種と同一であると誤認したものというべきである。また、山本係官は、法人については、比準同業者を業種別名簿の「中華料理、外国料理」という分類から抽出したというが、そこからどのようにして右の通達にいう業種を正しく抽出し得たのか、不明である。次に、乙第二号証の国税局長の通達は、「専ら喫茶店(甘味喫茶を除く。)を営む個人又は法人」として、被告に対し、シャノンの比準同業者の選定を指示しているが、この基準も不明確であるし、比準同業者の抽出に当たった吉金統括官や山本係官は、これを、個人については「普通喫茶」ないしは「コーヒー喫茶」として、法人については「喫茶」として、それぞれ業種別名簿から抽出したというが、これらが右の通達にいう「専ら喫茶店(甘味喫茶を除く。)を営む個人又は法人」と同一であるかどうかについては明らかにしていない。結局、両名は、右の通達に基づかず、あるいは通達を誤解して比準同業者の抽出を行ったといわざるを得ない。

また、大橋屋食堂の比準同業者の抽出に当たり用いられた前記通達には、「店舗を構えて」とあるが、山本係官は、これを確定申告書によってどのように確認し抽出したのかについて明らかにしていない。さらに、被告の照会に対する比準同業者の回答が果たして正しいものかも明らかではないから、被告が推計の基礎とした数値の正確性が担保されているとはいえない。

なお、被告の選定した比準同業者をみると、例えば、別紙三の表一のD、Eを比較すると、Eは売上金額が二〇〇万円程度多いが、一般経費は九〇〇万円余りも多くなっている。これは、人件費を取締役報酬等としてでなく、一般経費として支出していることを意味するが、このような差異を無視して比準同業者を選定しても、合理性はない。

5  本件各更正、各賦課決定の適法性の有無

(一) 被告の主張

右のような推計の方法を用いて、原告の本件各係争事業年度分の所得金額を算出すると、別紙Aのとおりであり、その所得金額は、昭和六一年八月期が一三一一万三一一〇円、昭和六二年八月期が一〇八四万〇二二六円、昭和六三年八月期が一四一八万三二三七円である。

ところで、本件各更正における原告の所得金額(異議決定後のもの)は、昭和六一年八月期が三七五万六六六六円、昭和六二年八月期が四九七万二六三〇円、昭和六三年八月期が五二八万一一〇六円であり、いずれの事業年度分も被告が本件で主張する金額の範囲内であるから、本件各更正は適法であり、これらの金額を前提としてされた本件各賦課決定もまた適法である。

(二) 原告の主張

被告の主張は争う。

6  実額反証の適否

(一) 原告の主張

原告が調査した結果、原告の昭和六一年八月期、昭和六二年八月期、昭和六三年八月期の各所得金額は、以下のとおりである。

(1) 昭和六一年八月期について

<1> 売上金額 六六一二万八三〇〇円

<2> 仕入(売上原価) 二四六八万九〇四四円

<3> 役員報酬 三〇三万六〇〇〇円

<4> 地代家賃 二七四万五〇〇〇円

<5> 減価償却費 三三二万二一九八円

<6> 支払利息割引料 一四六万九八二六円

<7> 給料賃金 一六九〇万〇二五〇円

<8> 特別経費の合計(<3>~<7>) 二七四七万三二七四円

<9> 一般経費 一三八二万八九三三円

<10> 受取利息 八万五三九〇円

<11> 公衆電話による売上 一三七万五九六〇円

<12> 雑収入 三五万二〇〇〇円

<13> 不動産管理収入 六〇万円

<14> 営業外収益(<10>~<13>) 二四一万三三五〇円

<15> 特別損失(固定資産除却損) 二九〇万六四八八円

<16> 所得金額(<1>-<2>-<8>-<9>+<14>-<15>) マイナス三五万六〇八九円

(2) 昭和六二年八月期について

<1> 売上金額 七四五七万一〇四〇円

<2> 仕入(売上原価) 二四九四万三七〇一円

<3> 役員報酬 三四八万六〇〇〇円

<4> 地代家賃 二九七万三〇〇〇円

<5> 減価償却費 二七九万五一八四円

<6> 支払利息割引料 一四六万七四一七円

<7> 給料賃金 二五一八万〇八五〇円

<8> 特別経費の合計(<3>~<7>) 三五九〇万二四五一円

<9> 一般経費 一五三七万二〇三八円

<10> 受取利息 六万二九八二円

<11> 公衆電話による売上 一五七万一四四五円

<12> 雑収入 二万円

<13> 不動産管理収入 一八〇万円

<14> 営業外費用(公衆電話通話料) 一二万六六六九円

<15> 営業外収益(<10>~<13>の合計-<14>) 三三二万七七五八円

<16> 特別損失(固定資産除却損) 一六〇万五一七六円

<17> 所得金額(<1>-<2>-<8>-<9>+<15>-<16>) 六万五四三二円

(3) 昭和六三年八月期について

<1> 売上金額 八九三九万二九八五円

<2> 仕入(売上原価) 二八六五万三二四三円

<3> 役員報酬 四八三万六〇〇〇円

<4> 地代家賃 三〇一万二五〇〇円

<5> 減価償却費 四二六万〇二三一円

<6> 支払利息割引料 一三七万四四九〇円

<7> 給料賃金 三三六九万四〇二五円

<8> 特別経費の合計(<3>~<7>) 四七一七万七二四六円

<9> 一般経費 一五三九万三九〇八円

<10> 受取利息 四万二八四三円

<11> 公衆電話による売上 一四三万六二一五円

<12> 雑収入 三五万二八二〇円

<13> 不動産管理収入 二三五万円

<14> 営業外費用(公衆電話通話料) 一四万八三〇六円

<15> 営業外収益(<10>~<13>の合計-<14>) 四〇三万三五七二円

<16> 特別利益(固定資産処分益) 二四万六一一三円

<17> 特別損失(固定資産除却損) 三万〇七〇七円

<18> 繰越欠損金控除 二一四万一五二二円

<19> 所得金額(<1>-<2>-<8>-<9>+<15>+<16>-<17>-<18>) 二七万六〇四四円

以上の経理のうち、大橋屋食堂の経理は、従業員の紅露哲男が担当し、領収証等の原始記録と入出金伝票等に基づき、毎日、会計帳簿(甲第六号証のAの1、Bの1、Cの1等)に正確に記帳していた。

原告主張の売上については、すべて書証を提出しており、計上漏れはなく、また、計上ミスや領収証の日付の誤り等はあるが、簿外資産や架空経費は存しない。原告の不動産管理収入は、当時の代表者若林シヅから、原告の経費(人件費)の補填のために得ていたもので、架空の経費を計上するどころではなく、これがなければ、毎年、赤字決算とならざるを得なかった。

本件係争事業年度の三年間をみると、年々売上は増加し、これに伴い売上利益も増加しているが、営業利益は増加しているわけではない。これは、原告が同族会社として取締役報酬や従業員の給料を増額しているからであって、法人所得が増加していなくても何ら不自然ではない。

(二) 被告の主張

間接的な資料を用いて所得を認定する方式である推計課税は、直接資料を用いて所得を認定する実額課税に代わるものではあっても、それ自体一つの課税方式であって、所得の実額の近似値を求める、いうなれば概算課税の性質を有しているというべきである。推計課税の本質をこのように解するときは、税務署長を被告とする所得税更正処分取消訴訟において原告が直接資料によって収入及び経費の実額を主張立証することは、被告の抗弁に対する単なる反証ではなく、自らが主張立証責任を負う再抗弁であり、しかも、その再抗弁においては単に収入又は経費の実額の一部又は全部を主張立証するだけでは足りず、収入及び経費の実額をすべて主張立証することを要するものというべきである。そして、実額反証における照明の対象は、前記の通り納税義務者の総収入金額、経費及び収支の対応関係であり、かつ、これらを重量的に立証すべきものである。

ところで、納税者が取引を記録した帳簿書類及び取引に係る原始記録の双方に基づいて申告することは、申告納税制度に内在している納税者の責務である。商人は商法上、帳簿を備え、これに日々の取引その他財産に影響を及ぼすべき一切の事項を整然かつ明瞭に記載する義務を負い(商法三二条、三三条)、その商業帳簿の保存義務を負っている(同法三六条)。したがって、税法が予定する実際の所得金額(実額)とは、かかる商業帳簿、とりわけ会計帳簿によって算出された数額であるということができ、正確な記帳に基づかない実額主義、実額反証は基本的には許容されるべきではなく、法人税法における各事業年度の所得の金額を実額で算出し、これを主張するためには、よほどの単純、小規模な事業でもない限り、事業に関して生ずる収入及び支出の一切を細大漏らさず記録した会計帳簿の存在が必要不可欠である。

ところが、原告提出の実額資料はこのような帳簿書類に該当しない。例えば、仕訳帳や総勘定元帳などの通常あるべき帳簿書類が存在しないし、右資料の内容を見ても、原告においては、日々の取引、その他財産に影響を及ぼすべき一切の事項を、整然かつ明瞭に記録し、照合し、検証する帳簿システムを採用していないことが明らかである。そのうえ、原告の場合、売上計上漏れ、架空仕入れ、架空経費、架空人件費の計上が疑われるほか、簿外資産の存在や、受取配当金の計上漏れも認められるのであり、これらのことからすると、原告の実額資料は、全体として、信用性が認められないというべきである。

第三当裁判所の判断

一  本件税務調査の経緯について

1  前記争いのない事実及び証拠(甲第二八八号証の一ないし一三、第二九一号証、第二九四号証、乙第一五、一六号証、証人三浦義正、同大橋秀子の各証言、原告代表者若林重利尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 被告は、原告の本件各係争事業年度分の法人税の確定申告書の内容を検討した結果、原告に対しては、長期間、法人税の調査を行っていないこと及び原告の申告所得金額が収入の伸びに対し低額に過ぎると疑われたことから、原告の保存する帳簿等の記入保存状況を調査し、申告の確実性、正確性を確認する必要性があるとの判断に達し、昭和六二年一一月上旬ころ、佐久間統括国税調査官(以下「佐久間統括官」という。)を介して、大野博毅国税調査官及び茂野俊郎国税調査官(以下「大野係官ら」という。)に原告の法人税の調査を命じた。

(二) 大野係官らは、右調査のため、原告に事前連絡をしないで、昭和六二年一一月一二日午前九時三〇分ころ大橋屋食堂に臨場した。その際、大野係官らは、応対に出た重利に、身分証明書を提示し、法人税の調査に来た旨を告げ、調査に協力するよう求めたところ、重利は、「今は仕込みで忙しい。事前になぜ連絡しなかったのか。」、「若林シヅの長男だが、会社のことは全部やっている。後で連絡するから今日は帰ってくれ」と返答した。大野係官らは、会社概要のみでも聴取しようと試みたが、重利は調査に応じようとしなかったため、やむを得ずその場を辞去した。そして、大野係官は、同日午後三時ころ、再び大橋屋食堂に臨場し、再度重利と面談し、同人に、税務調査は昭和六〇年八月期ないし昭和六二年八月期の三年分を行う予定であるが、場合によっては五年分になることもある旨伝えた。これに対し、重利は、「調査は一年分でいいのではないか」と述べるとともに、「調査日程については後で連絡する」と応答した。そこで、大野係官は、これ以上調査を進展させることはできないと判断し、その場を辞去した。

(三) 大野係官は、その後一週間を経過しても重利から何の連絡もないため、昭和六二年一一月一〇日午後三時三〇分ころ、事前連絡をしないで大橋屋食堂に臨場した。そこには重利がいたが、重利は、年内に連絡すると言うのみで、調査に応じようとしなかった。そこで、大野係官は、調査に協力しなければ、署独自の調査をせざるを得なくなる旨告げて辞去した。

(四) その後、大野係官は、昭和六二年一一月二四日、重利から、一二月四日午後三時三〇分に調査を受ける旨の連絡を受けたので、同日午後三時三〇分ころ、茂野係官を伴い、大橋屋食堂に臨場した。大野係官らは、重利から店舗内の奥座敷に案内された。そこには、原告の取締役でシャノンの営業に従事している大橋秀子(重利の姉、以下「秀子」という。)のほか、大橋屋食堂の従業員二名がおり、大野係官らは、原告の代表者若林シヅは病気入院中であるため、調査に立ち会うことができない旨の説明を受けた。その際、重利は、「調査に先立って税務署に言っておきたいことがある」と告げたうえ、「私は、鎌倉民主商工会の副会長をしている」、「今回の税務調査は、是認を勝ち取るまで戦う」、「修正はしない。更正をするならば、裁判まで争う」、「私の父は、昭和三八年の調査において、税務署の不当弾圧に負けずに調査を受け、申告是認を勝ち取った。私は、その遺志を継いで徹底的に戦う」などと述べた。大野係官は、秀子に対し、法人税の調査に来た旨を伝えるとともに、調査は所得金額の確認のためであること、調査は昭和六〇年八月期ないし昭和六二年八月期について行う旨説明した。その直後、その場に民主商工会の事務局員及び会員等が約三〇名程度入室したので、大野係官は、重利らに、守秘義務を理由に調査に関係のない者の退席を要求した。しかし、重利らはこれを拒否し、立会人らも「事前通知をしなかった理由を言え」、「立会いを認めろ」、「調査理由を言え」などと次々に発言し、その場が騒然となったため、大野係官は、調査の続行は不可能と判断し、重利らに調査ができる状態でないことを伝え、その場を辞去しようとした。すると、立会人のうち数名の者が大野係官らの前に立ちはだかり、進路を塞いで退出を妨害したので、大野係官らは、重利らに、このような状態では調査できないこと及び今後は署独自の調査をやらざるを得ないことを告げ、午後四時一五分ころ、退出した。大野係官らは、この日には、帳簿書類等の保存の有無を確認でなかった。

(五) 大野係官は、昭和六三年二月一日午後三時ころ、事前通知をしないで大橋屋食堂に臨場した。大野係官は、重利と面談し、調査への協力を要請したが、重利は、民商会員の立会いを認めなければ調査に応じられないこと、立会いを認めなければ裁判してもよいこと、今回の調査は自分の調査ということだけでなく、税務権力対全納税者という意識でいることなどを述べ、調査への協力に応じなかったので、大野係官はその場を辞去した。

(六) 大野係官、このままでは調査が進行しないため、役員である秀子に調査の協力を要請し調査の進展を図ろうとして、昭和六三年二月一六日午後四時ころシャノンに臨場した。そして、大野係官は、秀子に面接し、第三者の立会いの下では調査ができないことを説明し、立会人がいないところで帳簿を提示して調査に協力してほしい旨要請したが、秀子は、重利と都合を合わせてほしい旨及び立会人がいても構わない旨述べ、調査の進展は図れなかった。そこで、大野係官は、秀子に対し、前回の調査のような状況であれば、青色申告の承認の取消しの対象になること及び署独自の調査によらざるを得なくなることを告げ、その場を辞去した。

(七) 大野係官は、昭和六三年七月、人事異動により転勤となり、三浦義正国税調査官及び石渡晶一国税調査官(以下「三浦係官ら」という。)が原告の調査を引き継いだ。三浦係官らは、昭和六三年七月二八日午後二時ころ大橋屋食堂に事前通知をしないで臨場し、重利に面接し、法人税の調査のために臨場した旨を告げ、調査に協力するよう求めたが、重利が「今は忙しいから、三時に来てくれ」と申し立てたので、その場を辞去した。そして、三浦係官らは、同日午後三時ころ、再度大橋屋食堂に臨場し、重利に面接し、身分証明書と質問検査証を示し、調査に応じるよう要請したが、重利は、「今日は女房の実家に不幸があったのでだめだ。八月は自分が入院するから調査は九月以降にしてくれ」、「調査期日はそのうち連絡する」と言うばかりであったため、八月一一日に再度臨場する旨告げて、二〇分ほどでその場を辞去した。

(八) その後、三浦係官は、昭和六三年八月一日午前九時二〇分ころ、重利から、次回調査を八月一〇日の午後三時からにしてほしい旨の電話を受けた。三浦係官は、その際、重利に原告と関係のない第三者がいると調査ができない旨を告げたが、重利は、「それは来てみないとわからないよ。とにかく、こちらは三時から予定しているから」と述べて、一方的に電話を切った。

(九) 三浦係官らは、昭和六三年八月一〇日午後三時頃、大橋屋食堂に臨場し、重利から店舗内の奥座敷に通された。そこには秀子のほかに従業員ら六、七名の者が待機していた。三浦係官が、重利らに対し、法人税の調査に来た旨伝えたところ、店内に約二〇名の者達が次々と入り、重利の後ろに座った。三浦係官は、重利らに対し、「帳簿を提示していただく前に、調査に関係のない方を退席させてください」と要求したが、重利は、「私が呼んだのだから文句はないだろう」とか、「立会いを認めてはいけないということが、法律に書いてあるのか」などと申し立て、要求を拒否したので、三浦係官は守秘義務の話をし、再三にわたり立会人の退席を要求したが、重利らは要求を拒絶した。そこで、三浦係官は、会社に関係のない者を退席させ、帳簿を見られる状態にしないと青色申告の承認が取り消されることがあること及び署独自の調査をせざるを得なくなることを繰り返し説明したところ、立会人のうち数名が、「脅かすつもりか」とか、「調査理由を言え」などと発言した。重利は、そのような雰囲気の中、「帳簿ならここにあるよ」と言って、後ろのテーブルの上に置かれていた段ボール箱のふたを開けた。しかし、重利は、内容物を箱から取り出すことはしなかったので、三浦係官らは、箱の中身を確認することができなかったし、立会人も出ていく気配がなかったので、帳簿書類等を見ることはできなかった。三浦係官はこのような状態では、調査を続行することは不可能であると判断し、その旨重利らに伝えるとともに、署独自の調査によらざるを得ない旨告げて、その場を辞去しようとしたところ、立ち会っていた男性の一人が、「調査理由を言え」とか、「調査理由を一筆書け」と申し立て、左手で進路を塞いだ。三浦係官が「どいてください」と五、六回言ったところ、その男性がやっと手を下ろしたため、三浦係官らは結局、一五分程度でその場を辞去した。そして、三浦係官らが店の外に出たところで、秀子が近寄ってきて、立会人がいるとどうしても調査できないのかと聞いてきたので、三浦係官は、「このような状態では調査できません」と答えた。しかし、秀子から、立会人を排除するから調査してくれという話はなかった。

(十) 三浦係官は、右調査の状況を上司である佐久間統括官に報告したところ、同統括官から、原告の取引先に対して反面調査を実施し、推計の準備を進めるように指示され、同作業を開始した。三浦係官は、昭和六三年一一月初旬、佐久間統括官から、原告の調査については、昭和六三年八月期も対象とするように指示された。

(十一) 三浦係官は、昭和六三年一一月三〇日午後一時三五分ころ、事前通知なしにシャノンに臨場し、秀子に面接した。三浦係官は、法人税の調査に来た旨を告げ、昭和六〇年八月期ないし同六三年八月期に係る帳簿書類の提示を求めるとともに、調査への協力を要請した。これに対し、秀子が、「何で四年分なの」、「突然来ても応じられない」とか、「立会いを認めた上で調査してほしい」と主張したので、三浦係官は、再度守秘義務の話をしたが、秀子は、「こちらには秘密はない」と述べるのみで、調査は進展しなかった。そこで、三浦係官は、調査に関係のない第三者の立会いは認められないこと及び帳簿書類を見られる状態にしないと青色申告の承認が取り消されたり、署独自の調査によらざるを得なくなることを告げた。すると、秀子から連絡を受けた重利がその場に現れ、「おい、三浦、うそつくな、何をしているんだ。連絡もなく来て、営業妨害だ。営業補償しろ。申告納税制度を何だと思っているんだ」などと怒鳴ったので、三浦係官は、秀子に対し、立会人がいないところで調査に応じるよう尋ねたところ、秀子は、「調査に応じないとは何よ。今の言葉を取り消しなさい」と語気鋭く申し立てた。このため、三浦係官は、この日も調査の進展は望めないと判断し、一五分程度でその場を辞去した。重利は、三浦係官がシャノンを出てから大船駅の改札口に入るまで、「おい、三浦、いいかげんなことをするな」、「鎌倉税務署の三浦、正直な納税者をいじめるな」などと大声で何度も繰り返し言いながら、二、三分間、三浦係官につきまとった。

以上のとおり認められ、証人大橋秀子の証言、原告代表者若林重利の供述、甲第二九一号証(若林重利の陳述書)、第二九四号証(大橋秀子の陳述書)中、右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らし、たやすく採用することができない。

二  本件調査の適法性の有無について

右認定の事実によれば、被告が、昭和六二年一一月ころ、原告に対し、法人税法一五三条の質問検査権を行使しようとしたのは、その申告所得金額が収入の伸びに対し低額であり、また、原告に対しては、長期間、法人税の調査を行っていなかったためであると認められ、質問検査を行うための客観的必要性に基づくものといえるから、適法というべきである。

ところで、原告は、本件質問検査において、被告係官は、事前に調査の実施を通知せず、具体的な調査理由も告知しなかったとして、本件質問検査が違法であると主張する。しかし、法人税法一五三条の定める質問検査について、同条は、その範囲、程度、時期、場所等について格別の要件を定めていないから、これをどのように行うかは、質問検査の必要と相手方の私的利益との衡量において社会通念上、相当な限度にとどまる限り、収税官吏の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。そして、調査実施の日時、場所の事前通知、調査理由の告知なども、質問検査を行う上での法律上の要件とされてはいないから、このような事前通知や調査の理由の具体的な開示を行わずに調査を行っても、それだけでは直ちに税務調査が違法となるものではないというべきである。

また、原告は、被告が、昭和六二年一一月の本件調査着手時において、昭和六〇年八月期ないし昭和六二年八月期を調査対象年度としていたのに、その後六三年八月期についても調査の対象とすることにしたことは違法であると主張する。しかし、前記認定の事実によれば、被告が昭和六三年八月期についても調査の対象とすることにしたのは、調査進行中の昭和六三年一〇月に、昭和六三年八月期の申告期限が到来し、原告の同期の確定申告書が提出され、同期についても調査の対象を拡大させる必要があると判断されたためであると認められるから、右のように調査対象を拡大したことをもって、違法ということはできない。なお、甲第二九一号証、証人大橋秀子の証言、原告代表者若林重利の供述中には、昭和六三年七月二八日に三浦係官らが大橋屋食堂に臨場した際、調査年度を六二年度の一年間とするとの話しをした旨の部分があるが、前掲各証拠に照らし、にわかに採用することができない。

さらに、原告は、本件調査において、被告係官が第三者の立会いを認めなかったことをもって違法と主張する。しかし、質問検査は、被調査者の資産、営業上の秘密に立ち入らざるを得ないだけでなく、取引先である第三者の秘密事項にも調査が及ぶおそれがあるのであり、したがって、守秘義務(法人税法一六三条、国家公務員法一〇〇条一項)のない、税理士以外の第三者の立会いを認めると、法が守秘義務を定めた趣旨に反する事態が生じることも考えれるから、税務調査の際、税理士以外の第三者の立会いを許すかどうかも、権限のある税務職員の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当である。前記認定の事実によれば、本件調査において、重利らは、多数の民商の会員等の立会いを求めたのに対し、被告係官は、調査に関係のない第三者の立会いを認めていないが、これは右のような理由に基づくものであって、右の事実関係のもとにおいて、それは、被告係官に与えられた合理的裁量の範囲内の行為と認められるから、被告係官が第三者の立会いを認めなかったことをもって、違法ということはできないし、それが原告主張のような特定の意図をもってなされたと認めるべき証拠もない。なお、過去に、被告管内における税務調査の際、第三者の立会いを認めた例があるとしても、それは、当該事実関係のもとにおいて税務調査を担当した係官の合理的裁量の範囲内の問題であるから、そのような事例があったからといって、直ちに本件調査において、被告係官が第三者の立会いを認めなかったことが違法となるものではない。また、他の団体について、一般的に立ち会いを許していることを認めるべき証拠もない。

三  本件青色申告承認取消処分の適法性の有無について

前記認定のとおり、重利らは、本件調査において、大野係官ら及び三浦係官らが、調査に関係のない第三者である立会人を退席させた上で帳簿書類を提示し、調査に協力してほしい旨、再三にわたり説得を試みたにもかかわらず、終始非協力的な態度をとり続け、被告係官らの調査の協力要請に応じようとせず、帳簿書類等も提示しなかったものである。原告は、昭和六二年一二月四日の調査においても、帳簿書類をすべて準備し、大野係官らの目の前の机の上に帳簿書類等を置くとともに、すぐ脇の段ボール箱の中には原始資料等も用意したうえで、大野係官らに対し、帳簿を見てほしい、調査をしてほしいと再三要請した旨、また、昭和六三年八月一〇日の調査においても、帳簿書類等を三浦係官らの目の前の机の上に置き、領収書等の原始記録については、すぐ側の段ボール箱に居れていつでも取り出せる状態にして用意し、いつでも確認できる状態にしたうえで、調査をしてほしい、帳簿を見てほしいと要請した旨主張し、甲第二九一号証、原告代表者若林重利の供述中にはこれに副う部分があるけれども、前記認定の事実に照らし、採用することができない。

したがって、被告係官は、重利ら原告側の者が帳簿書類の調査に正当な理由なく応じず、これがため、帳簿書類の備付け、記録又は保存を確認することができなかったものというべきであるが、このような場合も、法人税法一二七条一項一号が定める青色申告承認の取消事由に該当するものと解するのが相当である。なぜならば、青色申告制度は、申告の基礎となる法人の帳簿書類の正確さに対する信頼を前提として成り立つものであり、当該法人の調査拒否により帳簿書類の提示が受けられず、その正確性の確認ができないような場合にまで、青色申告承認による特典の享受を認めなければならないとすることは、右制度の趣旨に反することになるからであり、同法一二六条所定の帳簿書類の備付け及び保存は、青色申告法人の帳簿書類が客観的に存在し、当該法人が現にこれを保存していることのみをいうのではなく、税務職員が必要に応じて、これをいつでも閲覧し得る状態におくことをも含むものと解するのが相当であるからである。

なお、原告は、青色申告承認取消処分は、帳簿の備付け、記録、保存のいずれの態様の義務違反が問われたのかを具体的な事実によって特定する必要があるのに、本件青色申告承認取消処分の通知書には、そのような理由付記がされていないから違法である旨主張する。しかし、法人税法一二七条二項は、青色申告承認の取消しとなった事実が同条一項各号のいずれに該当するかを記載すべき旨規定するにとどまり、一号該当の場合に、備付け、記録又は保存のいずれの義務違反があるかまで記載すべきものとはしていないのであるから、この点をとらえて、本件青色申告承認取消処分の理由付記が不備で、違法であるということはできない。

四  推計の必要性の有無について

前述したように、本件調査において、重利らは、被告係官から、再三にわたり、立会人を退席させ、帳簿等の原始資料を提示し、調査に協力するよう要請されたにもかかわらず、第三者の立会いを認めなければ調査に応じられないなどと主張して終始非協力的な態度をとり続け、立会人を退席させず、帳簿書類を提示しなかったものであり、その結果、被告は、原告の本件各係争事業年度分の所得金額を実額で算定することができなかったものであるから、被告において、原告の本件各係争事業年度分の所得金額を推計により算定する必要性があったというべきである。

五  推計の合理性の有無について

1  証拠(甲第二九六号証、乙第一、二号証、第三、四号証の各一ないし三、第五ないし第一四号証、第一七ないし第一九号証、証人山本一歩の証言、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 被告が原告の所得金額の算定に用いた推計方法は、大橋屋食堂においては米及び中華用そば玉の仕入金額の合計額、シャノンにおいてはコーヒー豆の仕入金額をそれぞれ基礎として、大橋屋食堂及びシャノンの比準同業者における売上原価に占める右各仕入金額の割合を乗じて原告の売上原価を算出し、さらに、右売上原価の金額を基礎として、比準同業者の平均売上原価率及び平均一般経費率により売上金額及び一般経費の額を算出し、右売上金額から売上原価、一般経費、特別経費(役員報酬、建物及び建物附属設備に係る減価償却費、支払利息割引料並びに家賃地代)をそれぞれ差し引いた金額に営業外収益(受取利息、公衆電話手数料、新装祝金収入及び不動産管理収入)を加えて、所得金額を推計するというものである。

(二) 被告は、右推計方法を採用するに際し、原告が中華食堂及び喫茶店を別個の事業所において営むことから、東京国税局長の通達(乙第一、二号証)により、原告の納税地を所轄する鎌倉税務署管内に事業所を有する中華食堂を営む個人又は法人の事業者並びに喫茶店を営む個人又は法人の事業者のうち、次のような抽出基準、すなわち、

(1) 中華食堂として「店舗を構えて、主として中華そば及びその他の中華風のめん類並びに簡単な中華料理を調理し、飲食させる個人又は法人」で米及び中華用そば玉の仕入れのある者、喫茶店として「専ら喫茶店(甘味喫茶を除く。)を営む個人又は法人」でコーヒー豆の仕入れのある者で、いずれも、使用人に対する給与等の支払のある者

(2) 青色申告の承認を受けている者

(3) 売上金額が次の範囲内である者

<1> 中華食堂を営む個人又は法人の事業者の場合、本件各係争分ないし各事業年度の米と中華用そば玉の仕入金額が別紙一の表一ないし三により算出した同表四の原告のそれの半分以上二倍以下の範囲内である者

<2> 喫茶店を営む個人又は法人の事業者の場合、本件各係争年分ないし各事業年度のコーヒー豆の仕入金額が別紙二の原告のそれの半分以上二倍以下の範囲内である者

(4) 年を通じて(1)の事業を継続している者

(5) 次の<1>及び<2>のいずれにも該当しない者

<1> 災害等により経営状態が異常であると認められる者

<2> 更正又は決定処分がされている者のうち、当該処分について国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間の経過していない者又は当該処分に対して不服申立てがされ、又は訴えが提起されて、現在審理中である者

を満たす者すべての者を、中華食堂を営む事業者については別紙三のとおり、喫茶店を営む事業者については別紙四のとおりそれぞれ抽出し、抽出すべき事業者が法人である場合は、原告と事業年度を六か月以上同じくする者をそれぞれの事業年度の比準同業者として抽出した。

右抽出に際し、被告の山本一歩国税調査官(以下「山本係官」という。)は、まず、鎌倉税務署に備えられた管内の事業者を業種別に分類した業種別名簿から(1)の業種に該当する者を抽出し、更に、右の諸要件に該当する者を、個人の事業者については、個人の確定申告書、青色申告決算書等で、法人については、確定申告書や法人の財務諸表、勘定科目内訳書、事業概況書、各種の届出等で、それぞれ調べて抽出した。そのうえで、山本係官は、右通達添付の書式に従い、各事業者に「米及び中華用そば玉」の仕入金額、「コーヒー豆」の仕入金額を照会し、相当数の回答を得て、最終的に右の各要件に該当する者を、漏れなく抽出し、「中華食堂を業とする者の課税事績報告書」(乙第三号証の一ないし三、別紙三に同じ)、「喫茶店を業とする者の課税事績報告書」(乙第四号証の一ないし三、別紙四に同じ)を作成し、吉金統括国税調査官の検算を得た。

(三) これらに基づく本件各係争事業年度分の原告の所得金額及びその算出根拠は、被告主張のとおり(別紙A)である。

以上のとおり認められる。

右事実によれば、被告が本件において採用した推計方法は、一定の基準を設けて比準同業者を抽出し、この比準同業者から得られる同業者比率をもとに原告の所得金額を推計するというものであるが、右に当たり、被告が採用した比準同業者の抽出基準は、業種の同一性、事業所の近接性、事業規模の近似性の要件を満たし、同業者の類似性を判別する要件として合理的なものであるといえるし、この抽出基準に準拠して比準同業者が抽出されていることからして、その抽出過程に恣意が介在する余地はなく、このようにして抽出された比準同業者の平均売上原価率、平均一般経費率等の算出方法も相当といえるから、このような推計方法を用いて原告の所得金額を算出することには合理性があり、これにより原告の所得金額を算出すれば、原告の実際の所得金額に近似した数値が得られるものと推認される。

2  原告は、被告の推計課税の数値が変遷したことをもって、被告が恣意的に推計課税を行っていることの表れである旨主張する。しかし、弁論の全趣旨によれば、被告が、当初、本訴において、原告の本件各係争事業年度分に係る法人税確定申告書に添付された決算報告書記載の売上金額を推計の基礎とする推計方法を採用していたのを、後に変更し、前記のように、原告における売上原価の一部の実額を推計の基礎として採用したのは、原告が本訴において実額反証のためとして提出した書証に信ぴょう性がなく、ひいては、原告の申告内容自体が信用できず、むしろ、反面調査等により客観的に実額を把握し得る原告における一定の仕入金額の実額を推計の基礎として算出した所得金額の方がより原告の真実の所得金額に合致する蓋然性があると判断したことによるものと認められ、実額反証の認められないことは、後記のとおりであるから、これをもって被告の恣意によるものということはできない。また、被告が比準同業者の選定数を減少させ、あるいは、新たな比準同業者を採用したのは、抽出条件を絞りこみ、同業者の類似性を厳格に要求した結果であると認められるから、これをもって、被告の恣意によるものということもできない。

また、原告は、被告が抽出した比準同業者について、中華食堂、喫茶店といっても、それぞれ業態が異なるから、被告のした推計方法には合理性がない旨主張する。しかし、推計課税は、正確な帳簿書類の備付けがなく、又は、当該納税者による調査に対する協力も得られない場合に行われるのであるから、同業者の平均値により推計課税をする場合に、当該納税者の個々具体的な営業条件をすべて把握した上で、これと同一の同業者だけを抽出することは困難であり、そのような抽出を要求することは、推計による課税自体を否定することになりかねず、正確な帳簿書類を備え付け、調査に協力する納税者との間で課税の公平に反する結果を生じることとなる。したがって、このような推計課税の性質上、比準同業者の抽出基準は、当該納税者の営業形態や規模の細部にわたってまで類似性が要求されると解すべきではなく、一般的、抽象的に見て実額に近似した金額を算出するのに必要な限度で類型的に設定されるべきである。そして、比準同業者による推計の方法は、いわゆる平均値による推計であり、同業者間に通常存在する程度の営業条件の差異は捨象されるから、その推計方法が業種の同一性、営業規模の一応の類似性及び平均値算出過程の整合性等、推計の基礎的要件に欠けるところがない以上、営業条件の差異が平均値による推計自体を全く不合理ならしめる程度に顕著なものでない限り、推計の合理性は是認されるというべきである。原告の主張は、要するに、原告においては、比準同業者と異なり、二つの事業を営んでいるのに、各別に役員がいないので、これらと比べて経費が過少に、ひいては所得が過大に算定されること、人件費、材料費が多額であることをいうものと解されるところ、前者については、原告の指摘は、それなりの理由があるが、それは、結局、役員の数が少ないことに帰着すること、これらのような営業条件、業態に係る事情は、同業者間に通常存在する程度の差異であるといえ、推計の基本的要件にかかわるものとはいえないから(なお、人件費、材料費については、どの程度、他の業者と異なるのかも不明である。)、これを斟酌することを要しないものというべきである。

また、原告は、いわゆる倍半基準による比準同業者の選定は合理性がないと主張する。しかし、いわゆる倍半基準は、推計の基礎事実となる項目につき、おおむね二分の一から二倍の範囲にある者に限定して比準同業者を抽出する方法であって、推計課税の方法として広く採用されており、本件においても、事業規模の近似性を求めるための数値として相当であり、合理性を有するものというべきである。

さらに、原告は、乙第一、二号証の通達の抽出基準が不明確であり、抽出過程にも誤りがあり、さらには、比準同業者からの回答が正確かどうかの担保もないとして、これらの資料に基づく推計には合理性がないと主張する。しかし、前述したとおり、被告の抽出基準が不明確であるとはいえないし、証人山本一歩の証言によれば、同証人のいう「中華そば」という業種には、ラーメンセットやチャーハンセット等を含むというのであるから、それは、結局、前記認定の通達の(1)の中華食堂と同じものを意味すると解され、しかも、前記認定のとおり「米及び中華用そば玉」の仕入れのある者を抽出の対象としているのであるから、抽出過程にも誤りがあるとはいえない。なお、比準同業者が提供した資料が不正確で信用に値しないと窺わせる証拠もない。その他、本件において、比準同業者の選定が合理性に欠けることを窺わせる事情は存しない。

六  実額反証の適否について

1  所得税の課税は、本来実額に対してされるべきであるから(国税通則法二四条、二五条)、被告がした本件推計課税につき、その必要性と合理性が認められるとしても、その後、原告が帳簿等による実額に基づく主張をし、これが真実の所得を明らかにするものであれば、それを課税標準とすべきである。しかし、原告の収入金額や必要経費等は、原告自身が最もよく知っているのであるから、被告の推計課税に対し、原告が実額反証を試みる以上は、原告の主張する売上金額が存在することが立証されるだけでなく、実際の売上がそのすべてであって、右主張額を上回るものでないことが立証されなければならず、売上原価及び必要経費についても同様に、その主張額の存在のみならず、実際の売上原価及び必要経費がこれらを下回るものでないことが合理的な疑いを容れない程度に立証されなければならないものというべきである。しかも、そこにおいては、単に収入又は経費の実額の一部又は全部を主張立証するだけでは足りず、収入及び経費の実額をすべて主張立証することを要し、かつ、その収入(売上)と経費とが対応することも立証しなければならない。

2  ところで、原告は、本件において、実額の主張をしているが、右に述べたところからすると、原告の実額主張が認められるためには、その収入金額がすべての収入金額であり、原告及び経費の額がその収入金額と対応する費用であり、その主張する実額が真実の所得額に合致することを立証する必要があることになるから、これが成功するには、日々の取引が正確に記載された総勘定元帳等の会計帳簿の存在が不可欠というべきである。しかも、原告は、本件青色申告承認の取消処分を受けるまでは、被告から青色申告の承認を受けていたのであるから、大蔵省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付け、これにその取引を記録しておく義務があったのであり(法人税法一二六条。なお、原告は、同法施行規則五八条に定める「帳簿書類の記載事項等の省略」の承認を受けていない。)、また、現金出納帳、その他必要な帳簿を整え、その取引に関する事項を整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行う必要があったものである(同法施行規則六六条)。ところが、原告が提出している実額資料によっても、仕訳帳や総勘定元帳等の通常あるべき帳簿書類が存在しないし、原告提出の実額資料を見ても、日々の取引、その他財産に影響を及ぼすべき一切の事項を、整然かつ明瞭に記録し、照合し、検証する帳簿システムを採用しているとはいえない。また、原告は、大橋屋食堂、シャノンにおいて飲食業を営み、売上代金のほとんどが現金で入金される業種であり、このような業種は、売上代金のほとんどが現金で回収され、顧客が特に領収証等を求めることも少ないため、売上の痕跡が残りにくく、売上が除外されるとそのま不明となってしまうことが多いから、その売上金額の立証等においては、現金管理が適正に行われているかどうかが重要な要素となり、現金出納帳の記帳の正確性が最も期待される。ところが、原告において、日々の現金に係る入出金及び残高を記帳するための現金出納帳が存在するのは、大橋屋食堂の昭和六二年八月期と昭和六三年八月期のみであり、シャノンにおいては、このような現金出納帳が作成された形跡は存在しない。

3  原告が提出している実額資料のうち、最も重要と思われ、領収証等の原始資料や入出金伝票等に基づき、毎日作成されたという、甲第六号証のAの1、2、Bの1、2、Cの1、2について、原告は、このうちのAの1、Bの1、Cの1は、大橋屋食堂分の帳簿であり、重利の友人で従業員の紅露哲男が作成したといい、同証人の証言によれば、同人は、昭和六一年三月から原告の正式な従業員となり、経理を担当し、右帳簿を作成していたことが認められる。また、原告は、右Aの2、Bの2、Cの2は、シャノン分の帳簿であり、秀子が作成したといい、甲第二九三号証には、これに副う記載がある。しかし、証人大橋秀子は、これらの帳簿のうち、自分が記載したのは書証の回りの枠だけで、中の数字は店の客の上野なる者に記載してもらっていたなどとあいまいな証言をしておりこれがいつ、誰により作成されたのか、正確には明らかでない。加えて、証人紅露哲男は、大橋屋食堂分について、毎日の現金残高を照合していなかったと証言しており、証人大橋秀子も、シャノン分について、毎日現金残高を照合していたとは証言していない。そして、例えば、甲第六号証のAの1とBの1とを対照すると、大橋屋食堂の昭和六一年八月三〇日の現金残高七〇万八六一二円(Aの1のNo.五六)が、昭和六一年九月一日に引き継がれるはずなのに、同日に繰り越された金額は七七万四六一〇円(Bの1のNo.一三四)となっており、これについて、決算時に調整したことを示す客観的な資料も存在しないし、決算を担当した証人紅露哲男の証言によっても、このことは明らかでない。また、大橋屋食堂とシャノンとの貸借、立替えについて、双方の帳簿には、一致しない点が認められる。例えば、シャノンの帳簿である甲第六号証のAの2、Bの2、Cの2においては、昭和六一年二月五日に五〇万円(〇〇一八と上部に記載のあるもの)、同年四月五日に三〇万円(同様〇〇二四)、昭和六二年六月三〇日に七四万三〇〇〇円(同様〇〇三〇)、同年八月三一日に一〇〇万円(同様〇〇三六)、昭和六三年四月一一日に六〇万円(同様〇〇二四)がシャノンから大橋屋食堂に支払われた旨の記載があるが、甲第六号証のAの1、Bの1、Cの1には、何らの記載がない。

決算について、証人紅露哲男は、大橋屋食堂とシャノンとで別々に試算表を作成し、それを同証人が合算して決算書を作成していたというが、その試算表は書証として提出されていないうえ、同証人は、シャノンの資料としては、試算表しか見ていないというのであるから、それが正しいものかどうか、確認することはできないことになる。

以上の点だけからしても、原告の現金管理及びその記帳は不正確で信頼性に欠けるものといわざるを得ず、ひいては、原告の提出した実額資料が全体として信ぴょう性に欠けるものであることを窺わせるものといわなければならない。

4  そうすると、原告の実額の主張は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというべきである。

七  結論

以上によれば、被告が本件において主張する原告の本件各係争事業年度分の所得金額は、右のとおり、昭和六一年八月期が一三一一万三一一〇円、昭和六二年八月期が一〇八四万〇二二六円、昭和六三年八月期が一四一八万三二三七円であるところ、本件各更正における原告の所得金額(異議決定後のもの)は、昭和六一年八月期が三七五万六六六六円、昭和六二年八月期が四九七万二六三〇円、昭和六三年八月期が五二八万一一〇六円であって、いずれの事業年度分も被告が本件で主張する金額の範囲内であるから、本件各更正は適法であり、これらの金額を前提としてされた本件各賦課決定もまた適法である。

よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 裁判官 近藤裕之)

別表一

課税の経緯(自昭和六〇年九月一日至同六一年八月三一日事業年度の法人税額等)

<省略>

別表二

課税の経緯(自昭和六一年九月一日至同六二年八月三一日事業年度の法人税額等)

<省略>

別表三

課税の経緯(自昭和六二年九月一日至同六三年八月三一日事業年度の法人税額等)

<省略>

別紙A

原告の本件係争各年分の所得金額

一 昭和六一年八月期の所得金額 一三一一万三一一〇円

1 売上金額 八一八三万五四二七円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の売上原価(後記2(一) 米及び中華用そば玉の仕入金額を比準同業者六者の売上原価に占める米及び中華用そば玉の割合の平均値で除して算出した金額)一九〇八万〇八六三円を比準同業者六者の売上原価率の平均値四〇・五八パーセント(別紙三の表一の<6>欄の平均)で除して算出した金額四七〇二万〇三六二円

(二) シャノンの売上原価(後記2(二) コーヒー豆の仕入れ金額を比準同業者四者の売上原価に占めるコーヒー豆の仕入れ金額の割合の平均値で除して算出した金額)一〇一一万七二五八円を比準同業者四者の売上原価率の平均値二九・〇六パーセント(別紙四の表一の<6>欄の平均)で除して算出した金額三四八一万五〇六五円

2 売上原価

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の米及び中華用そば玉の仕入金額四六八万四三五二円(別紙一の表四 昭和六一年八月期の金額)を比準同業者六者の売上原価に占める米及び中華用そば玉の仕入金額の割合の平均値二四・五五パーセント(別紙三の表一の<5>欄の平均)で除して算出した金額一九〇八万〇八六三円

なお、中華用そば玉の仕入金額は、昭和六一年八月期における有限会社邦栄堂製麺所からの仕入金額一七九万七三〇〇円(別紙一の表二)に、平成三年一月及び二月の右会社からの仕入金額のうち、中華用そば玉の占める割合の平均値八八・四三パーセント(別紙一の表三の平均)を乗じた金額である。

(二) シャノンのコーヒー豆の仕入金額九一万一五六五円(別紙二の昭和六一年八月期の金額)を比準同業者四者の売上原価に占めるコーヒー豆の仕入金額の割合の平均値九・〇一パーセント(別紙四の表一の<5>欄の平均)で除した金額一〇一一万七二五八円

3 一般経費 三二三一万五九四八円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。なお、一般経費とは、損金に算入すべきもののうち、前記2の売上原価及び後記8の特別経費(4ないし7を合計したもの)以外の費用であり、以後の係争事業年度分についても同様である。

(一) 大橋屋食堂の売上金額四七〇二万〇三六二円に、大橋屋食堂の比準同業者六者の一般経費率の平均三六・〇六パーセント(別紙三の表一の<7>欄の平均)を乗じて算出した金額一六九五万五五四二円

(二) シャノンの売上金額三四八一万五〇六五円に、シャノンの比準同業者四者の一般経費率の平均四四・一二パーセント(別紙四の表一の<7>欄の平均)を乗じて算出した金額一五三六万〇四〇六円

4 役員報酬 三〇三万六〇〇〇円

右金額は、原告の昭和六一年八月期の確定申告書に添付された第二七期確定決算書に記載された役員報酬の金額である。

5 建物及び建物附属設備に係る減価償却費 四五万八八〇六円

右金額は、原告の昭和六〇年八月期の確定申告書に記載された建物の期末現在の帳簿価額四四四万〇九一八円及び建物附属設備の期末現在の帳簿価額一三万四九〇七円に基づいて算出した、建物に係る減価償却費四三万九六五〇円(帳簿価額×償却率(定率法)〇・〇九九)及び建物附属設備に係る減価償却費一万九一五六円(帳簿価額×償却率(定率法)〇・一四二)の合計額である。

6 支払利息割引料 一四六万九八二六円

右金額は、原告の昭和六一年八月期の確定申告書に添付された第二七期確定決算書に記載された支払利息割引料の金額である。

7 家賃地代 二七四万五〇〇〇円

右金額は、原告の昭和六一年八月期の確定申告書に添付された第二七期確定決算書に記載された地代家賃の金額である。

8 特別経費の合計額 七七〇万九六三二円

4ないし7の合計金額である。

9 受取利息 九万五四四九円

右金額は、原告の昭和六一年八月期の確定申告書に添付された第二七期確定決算書に記載された受取利息の金額である。

10 公衆電話手数料 七万三九三五円

原告が昭和六一年八月期中に日本電信電話株式会社から受領した公衆電話の基本手数料収入である。

11 新築祝金収入 三三万二〇〇〇円

右金額は、原告の昭和六一年八月期の確定申告書に添付された第二七期確定決算書の附属明細書に記載された新築祝金の金額である。

12 営業外収益合計額 五〇万一三八四円

9ないし11の合計金額である。

13 所得金額 一三一一万三一一〇円

右の1の金額から2、3及び8の金額を差し引いた金額に12の金額を加算した金額である。

二 昭和六二年八月期の所得金額 一〇八四万〇二二六円

1 売上金額 八一九一万九七二六円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の売上原価(後記2(一) 米及び中華用そば玉の仕入れ金額を比準同業者五者の売上原価に占める米及び中華用そば玉の割合の平均値で除して算出した金額)二一二一万五〇八〇円を比準同業者五者の売上原価率の平均値四一・九二パーセント(別紙三の表二の<6>欄の平均)で除して算出した金額五〇六〇万八四九二円

(二) シャノンの売上原価(後記2(二) コーヒー豆の仕入金額を比準同業者五者の売上原価に占めるコーヒー豆の仕入金額の割合の平均値で除した金額)八九二万六八三三円を比準同業者五者の売上原価率の平均値二八・五一パーセント(別紙四の表二の<6>欄の平均)で除して算出した金額三一三一万一二三四円

2 売上原価 三〇一四万一九一三円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の米及び中華用そば玉の仕入金額五〇〇万二五一六円(別紙一の表四昭和六二年八月期の金額)を比準同業者五者の売上原価に占める米及び中華用そば玉の仕入金額の割合の平均値二三・五八パーセント(別紙三の表二の<5>欄の平均)で除して算出した金額二一二一万五〇八〇円

なお、中華用そば玉の仕入金額は、昭和六二年八月期における有限会社邦栄堂製麺所からの仕入金額一九二万五二七〇円(別紙一の表二)に、平成三年一月及び二月の右会社からの仕入金額のうち、中華用そば玉の占める割合の平均値八八・四三パーセント(別紙一の表三の平均)を乗じた金額である。

(二) シャノンのコーヒー豆の仕入金額九三万〇一七六円(別紙二の昭和六二年八月期の金額)を比準同業者五者の売上原価に占めるコーヒー豆の仕入金額の割合の平均値一〇・四二パーセント(別紙四の表二の<5>欄の平均)で除した金額八九二万六八三三円

3 一般経費 三四四〇万三三〇五円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の売上金額五〇六〇万八四九二円に、大橋屋食堂の比準同業者五者の一般経費率の平均三八・三五パーセント(別紙三の表二の<7>欄の平均)を乗じて算出した金額一九四〇万八三五六円

(二) シャノンの売上金額三一三一万一二三四円に、シャノンの比準同業者五者の一般経費率の平均四七・八九パーセント(別紙四の表二の<7>欄の平均)を乗じて算出した金額一四九九万四九四九円

4 役員報酬 三六三万六〇〇〇円

右金額は、原告の昭和六二年八月期の確定申告書に添付された第二八期確定決算書に記載された役員報酬の金額である。

5 建物及び建物附属設備に係る減価償却費 四一万二五六一円

右金額は、原告の昭和六〇年八月期の確定申告書に記載された建物の期末現在の帳簿価額四四四万〇九一八円及び建物附属設備の期末現在の帳簿価額一三万四九〇七円に基づいて算出した、建物に係る減価償却費三九万六一二五円((帳簿価額-前回償却費)×償却率(定率法)〇・〇九九)及び建物附属設備に係る減価償却費一万六四三六円((帳簿価額-前回償却費)×償却率(定率法)〇・一四二)の合計額である。

6 支払利息割引料 一四六万七四一七円

右金額は、原告の昭和六二年八月期の確定申告書に添付された第二八期確定決算書に記載された支払利息割引料の金額である。

7 家賃地代 二九七万三〇〇〇円

右金額は、原告の昭和六二年八月期の確定申告書に添付された第二八期確定決算書に記載された地代家賃の金額である。

8 特別経費の合計額 八四八万八九七八円

4ないし7の合計金額である。

9 受取利息 六万二九八二円

右金額は、原告の昭和六二年八月期の確定申告書に添付された第二八期確定決算書に記載された受取利息の金額である。

10 公衆電話手数料 九万一七一四円

原告が昭和六二年八月期中に日本電信電話株式会社から受領した公衆電話の基本手数料収入である。

11 不動産管理収入 一八〇万円

右金額は、原告の昭和六二年八月期の確定申告書に添付された第二八期確定決算書の附属明細書に記載された不動産管理収入の金額である。

12 営業外収益合計額 一九五万四六九六円

9ないし11の合計金額である。

13 所得金額 一〇八四万〇二二六円

右の1の金額から2、3及び8の金額を差し引いた金額に12の金額を加算した金額である。

三 昭和六三年八月期の所得金額 一四一八万三二三七円

1 売上金額 九三四四万五六五九円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の売上原価(後記2(一) 米及び中華用そば玉の仕入金額を比準同業者四者の売上原価に占める米及び中華用そば玉の割合の平均値で除して算出した金額)二四一八万七八一九円を比準同業者四者の売上原価率の平均値四二・二一パーセント(別紙三の表三の<6>欄の平均)で除して算出した金額五七三〇万三五二七円

(二) シャノンの売上原価(後記2(二) コーヒー豆の仕入金額を比準同業者五者の売上原価に占めるコーヒー豆の仕入金額の割合の平均値で除して算出した金額)九四九万〇九二四円を比準同業者五者の売上原価率の平均値二六・二六パーセント(別紙四の表三の<6>欄の平均)で除して算出した金額三六一四万二一三二円

2 売上原価 三三六七万八七四三円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の米及び中華用そば玉の仕入金額五六九万一三九四円(別紙一の表四昭和六三年八月期の金額)を比準同業者四者の売上原価に占める米及び中華用そば玉の仕入金額の割合の平均値二三・五三パーセント(別紙三の表三の<5>欄の平均)で除して算出した金額二四一八万七八一九円

なお、中華用そば玉の仕入金額は、昭和六三年八月期における有限会社邦栄堂製麺所からの仕入金額一九八万九五九〇円(別紙一の表二)に、平成三年一月及び二月の右会社からの仕入金額のうち、中華用そば玉の占める割合の平均値八八・四三パーセント(別紙一の表三の平均)を乗じた金額である。

(二) シャノンのコーヒー豆の仕入金額九七万五六六七円(別紙二の昭和六三年八月期の金額)を比準同業者五者の売上原価に占めるコーヒー豆の仕入金額の割合の平均値一〇・二八パーセント(別紙四の表三の<5>欄の平均)で除した金額九四九万〇九二四円

3 一般経費 三八六八万七四七九円

右金額は、次の(一)と(二)の合計金額である。

(一) 大橋屋食堂の売上金額五七三〇万三五二七円に、大橋屋食堂の比準同業者四者の一般経費率の平均三八・〇四パーセント(別紙三の表三の<7>欄の平均)を乗じて算出した金額二一七九万八二六一円

(二) シャノンの売上金額三六一四万二一三二円に、シャノンの比準同業者五者の一般経費率の平均四六・七三パーセント(別紙四の表三の<7>欄の平均)を乗じて算出した金額一六八八万九二一八円

4 役員報酬 四八三万六〇〇〇円

右金額は、原告の昭和六三年八月期の確定申告書に添付された第二九期確定決算書に記載された役員報酬の金額である。

5 建物及び建物附属設備に係る減価償却費 三七万一〇一一円

右金額は、原告の昭和六〇年八月期の確定申告書に記載された建物の期末現在の帳簿価額四四四万〇九一八円及び建物附属設備の期末現在の帳簿価額一三万四九〇七円に基づいて算出した、建物に係る減価償却費三五万六九〇九円(帳簿価額から前二回の償却費を差し引いた金額に、前同様の償却率を掛けたもの)及び建物附属設備に係る減価償却費一万四一〇二円(右に同じ)の合計額である。

6 支払利息割引料 一三七万四四九〇円

右金額は、原告の昭和六三年八月期の確定申告書に添付された第二九期確定決算書に記載された支払利息割引料の金額である。

7 家賃地代 三〇一万二五〇〇円

右金額は、原告の昭和六三年八月期の確定申告書に添付された第二九期確定決算書に記載された地代家賃の金額である。

8 特別経費の合計額 九五九万四〇〇一円

4ないし7の合計金額である。

9 受取利息 四万二八四三円

右金額は、原告の昭和六三年八月期の確定申告書に添付された第二九期確定決算書に記載された受取利息の金額である。

10 公衆電話手数料 三〇万四九五八円

原告が昭和六三年八月期中に日本電信電話株式会社から受領した公衆電話の本手数料収入である。

11 不動産管理収入 二三五万円

右金額は、原告の昭和六三年八月期の確定申告書に添付された第二九期確定決算書の附属明細書に記載された不動産管理収入の金額である。

12 営業外収益合計額 二六九万七八〇一円

9ないし11の合計金額である。

13 所得金額 一四一八万三二三七円

右の1の金額から2、3及び8の金額を差し引いた金額に12の金額を加算した金額である。

別紙一

表一 大橋屋食堂における米の仕入金額

<省略>

表二 大橋屋食堂における中華麺の仕入金額

<省略>

表三 有限会社邦栄堂製麺所からの仕入金額の内、中華麺の占める金額

<省略>

表四 米と中華麺の仕入金額の合計金額

<省略>

別紙二 シャノンにおけるコーヒー豆の仕入金額

<省略>

別表三 中華食堂を営む者の課税事績表

表一(自昭和60年9月1日至同61年8月31日)

<省略>

表二(自昭和61年9月1日至同62年8月31日)

<省略>

表三(自昭和62年9月1日至同63年8月31日)

<省略>

別表四 喫茶店を営む者の課税事績表

表一(自昭和60年9月1日至同61年8月31日)

<省略>

表二(自昭和61年9月1日至同62年8月31日)

<省略>

表三(自昭和62年9月1日至同63年8月31日)

<省略>

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